それでは、今日はメトロノームを使ったトレーニングの記念すべき第1回目!
まず試しにメトロノームはまずは60/minでならして、次の譜例の通りに自分も音を鳴らしてみる。
なお、自分が鳴らす音はクリックと少しでもずれたら分かるように、出来れば鋭い音のするものがいい。私の場合はドラムのスティック2本を拍子木のように使っている。とは言っても、お手元になかなか都合の良いものはないかもしれないので、手拍子でも構わない。

要するに、4分音符オモテ(1拍、3拍)で鳴っているクリックと同時に自分も叩く、ということ。
一見簡単で最もシンプルなエクササイズだが、実はこれが一番アラが出る。なぜならばズレたら途端に分かってしまい、全くごまかしがきかないからである。
さて今日は、まずこのトレーニングの最も大事なコンセプトを覚えていただきたいと思う。それは、
「メトロノームに合わせる」のではない!
ということである。
いきなり奇をてらったことを言って興味を引こうとしているではない。実はこれが、このトレーニングの一番の本質と言ってもいいくらいのポイントなのだ。
前回の記事で「メトロノームと友達になる」と言ったが、これはもう少しかみ砕くと
自分で自分のパルスを生み出し、メトロノーム君のパルスとコラボできるようになる
という意味である。メトロノーム先生に服従し、追随しているうちは、いつまでも対等な関係にはなれない。むしろ自分のパルスをメトロノームに対して主張する気構えが必要だ。
これは、バンドアンサンブルに置き換えれば、周りの誰かに寄りかかるのではなく、まず自分が曲の最初から最後まで自分なりのタイムキープを主張しているかどうか、ということである。
優れたミュージシャンには必ずこれがある。もちろん、主張するだけでなくタイムキープが本当に正確であることがより望ましい。ただ、超一流のミュージシャンも完全無欠であるかというとそうでもない。実際にトッププロの演奏例でも、同時に鳴らすべき音符がずれていることは、ある。ただ、他人のご機嫌をうかがって出している音と、自分が自信に満ちたタイミングで鳴らしている音は、まるで説得力が違うので、トッププロの演奏は結果的にずれた音もかっこよくサウンドするのである。
では、もう一度上記の考え方を頭に入れたうえで、同じエクササイズをやってみよう。
メトロノームのテンポは60で。(つまり譜面上のテンポは四分音符=120)
自分の音が1発でもクリックからずれたら爆弾が爆発するくらいの必死さで取り組んでほしい。できれば1分くらいは集中して音を鳴らし続けてみよう(その間におそらく何回かはあなたは爆死するだろう)。
もし、最初にクリックを4回~8回くらい聞いただけで寸分たがわないタイミングに入り込めるなら、もうあなたはこのトレーニングを卒業していい。
気が付かれた方も多いかもしれないが、まず初めに、よほどメトロノーム君ワールドに没頭しなければ、最初の音すら出せないのではないだろうか。
そしてもう一つ、タイムキープをするためには、ただ漫然と手を動かすだけでは不可能で、自分の体全体(特に呼吸のリズム)を使ってその世界に没入しなければならない、ということに気づかれただろうか。
つまり演奏を始めるためには、まず来るべき音楽のパルスに十分に没入し、呼吸を作り、その中で最高の集中力で一つ目の音を出す、というプロセスがもれなく必要なのである。
また、もしあなたがバンドでカウントを出す立場であれば、あなたはメトロノームに代わってたった2小節(時に1小節!)の音符でバンド全体にパルスを浸透させなければならない。そのためには事前に十分な時間をかけて提示すべきパルスをイメージしなければできないはずだ。
また、もしあなたが他のメンバーのカウントを受け取って演奏するのであれば、カウントされているたった2小節で同じパルスを(呼吸を)自分の中に作らなくてはならない。しかしそれがどれだけ難しいのかは上記の実験で明らかだ。
プロの出音は最初の1音からアマチュアと全く異なるものだが、その理由はまさにここにある。つまり、命のかかった音とテキトーな意思で出している音は違って当たり前なのである。
(Vol2. 終わり)
