週末に我が家のピアノを調律してもらいました。
調律したてのピアノというのは、やっぱり気持ちがいいですね。オイル交換したての車を走らせたときの快感にも似ています(って、かえって伝わりにくい例かも、、)。昔からお世話になっているベテラン調律師さんの疋田さんに、お話を伺ってみました。

ピアノには88個の鍵盤があります。つまり、単純に考えると88本の弦の音程を正確に合わせるということになりますね。これだけでも大変な仕事だと思うのですが、実は、よく見るとピアノは1つの音程あたり、1本の弦が張ってあるわけではないのです!
私のYAMAHA C3の場合ですが、1本の弦で鳴らしているのは、再低音部の10個の音程(このあたりの音程は実際の演奏ではそれほど多く使いません)、そこから上の16音程分(1オクターブちょっと、ベースの音域くらい)はそれぞれ2本の弦が張ってあります。そして、さらにその上からの絶対多数、62個の音程は、なんと3本ずつ弦が張ってあるのです。つまり、計算すると、、10+16×2+62×3=228本!の弦の音程を合わせる仕事というわけです。


音域によって弦の本数が違う理由は、まず最初に音の大きさのバランスを取ることもありますが、複数の弦を同時に鳴らすことで豊かな音色を引き出す狙いもあるそうです。
調律師さんのお仕事は、弦の音程を合わせる(調律)だけではありません。打鍵感(タッチ)をそろえる「調整」、さらには全体の音色を揃える「整音」というプロセスがあって、初めて楽器全体が完成するのです。さらに、普段の演奏で気になるところを色々直してくれます。例えばペダルを踏んだ時の雑音だったり、特定の音程だけ響きが違って聞こえるなど、演奏者のリクエストにきめ細かく対応してくれます。まさにお医者さんのようですね。228弦の調律だけで気が遠くなりそうですが、これらのプロセスを込みで、1時間半から長くても2時間程度で仕上げてしまうのですから、驚きです。
さて、お話を聞いていると自分では知らなかったことがまだまだあります。ピアノの響きを豊かにする秘密、その一つがアリコートと呼ばれる機構です。
これは昔のモデルにはなかったそうですが、通常ハンマーが叩いて振動する部分(有効弦)の先に、余りの弦を利用して倍音を鳴らす部分が付いているのです!

この部分がそういう目的だったとは!今まで知らなくてお恥ずかしい限りです。。
さらには、響板を本体にしっかり止めているように見えるボルトも、響きを止めないためにわざと隙間が空くように設計されているのだとか。これも初耳でした。

楽器をよりよくするために、開発者の努力は今も世界中で続いているのだそうです。所有していながら楽器のことはまるで分っていなかったのだなと思い知らされました。
(前編終わり)

