今回は新しく導入したマスタリング用のプラグイン”Ozone”のご紹介です。こちらのソフトウェアについては、以前、少しこのブログでも触れました。
音楽を制作する過程はざっくり言えば「各パートを録音する(または打ち込む)」→「切ったり並べたりして曲を構成する」→「各パートの音質を調整したり、全体の音量バランスを取る(ミキシング)」→「最終的に全体の音量や音質を整えて発表作品として完成させる(マスタリング)」となります。
良い音楽を作るためには、何よりも良い音を録音することが大事なのですが、そのあとのミキシングやマスタリングの腕前によっても、印象ががらりと変わってしまうのです。いわば世の中に出す前にお化粧を施す工程と言えますね。演奏者ではなくエンジニアのセンスが問われるところで、私が今までほとんど知らない領域でした。

知り合いの音楽プロデューサーにレッスンを受けたとき、私が録音した音源を試しにその方にミックス・マスタリングしてもらったら、自分の作品とは全然違う印象に聴こえるものになってビックリしたのをきっかけに、その大切さに気付いたのでした。Ozone はその時に紹介いただいた、AIによるマスタリングアシスタント・プラグインです。そう、AIなんです。今まではエンジニアは様々なマスタリングツールをどのように使いこなすかを、多くの経験から身に着け腕を磨いてきたわけですが、このプラグインは、その優秀なマスタリングエンジニアを一人雇うようなものです。使い方は簡単!このプラグインを起動して自分の曲を聴かせると、勝手にお勧めのツールをいくつか起動しそのかかり具合まで調整してくれちゃうのです。
ちなみにマスタリングに用いる基本的なツールには以下のようなものがあります。これらのツールはミキシングの工程でも各パートのトラックに対して用いることがありますが、全体の仕上げにも活躍します。
イコライザー:特定の周波数の音を強調したり、逆に減衰させたりする
コンプレッサー:音の強弱がありすぎる部分を馴らして聴きやすくする
リミッター(マキシマイザー):音量の大きすぎるピークをカットし、全体の音圧を底上げする
また、それ以外にもより魅力的な仕上がりにするために以下のようなツールがあります。
エキサイター:倍音成分を加えることにより、リッチな聞き映えにする
ステレオイメージャー:左右の広がり感を調整する
もちろん、今どきはこれらはハードウェア(機械)ではなく、ソフトウェアとして開発されています。
”OZONE”はこれらのアプリケーションをパッケージとして提供しているだけでなく、それらを操るAIエンジニア自身が一人付いてくる、というわけです。
ということは、このソフトウェアさえ手に入れれば、自分に何も知識がなくても音楽を勝手にマスタリングしてくれるの?ということになるのですが、極論すればまさにそういうことです。OZONEがマスタリングしてくれたサウンドは、元のミックスより明らかに垢抜けた聴き心地になっています。
一つ使用例を紹介します。
ミックス後の総合トラック(いわゆる2mix)
Ozoneを起動して、2mixを再生して聴かせます。この時、マスタリングの方向性(Vintage or Modern)と出来上がりの音圧の志向(Low, Medium, High)を選ぶことが出来ます。今回はModernの Mediumを選んでみます)

するとAIがいくつかの内臓ツールを自動的に起動して、それぞれのパラメータも勝手に設定してくれます。


Ozoneで処理した後のサウンドがこちら
音圧がガツンと上がり、音像もくっきりしているのが良く分かると思います。
今回採用されたツールは
・イコライザー(パッシブイコライザー)
・ダイナミックイコライザー
・マキシマイザー
となっています。(上記結果画面の左上にツールが並んでいるのがお分かりいただけると思いますが、これらを左から順番に元の音源に対して重ねて処理していることになります)
ちなみに一般的なイコライザー(パッシブイコライザー)は特定の周波数のブースト/カットを曲を通じてし続けるのに対して、ダイナミックイコライザーというのは、その周波数の音量が一定以上になった時にブースト/カットを発動するよう動的にコントロールすることが出来るもので、より繊細な音作りを可能とするものです。
このイコライザ同士の組み合わせを仕上げに使うというのは、素人にはなかなか思いつかない工夫です。
ここでAI提案された各ツールに対し、気に入らなければ自分で非採用にする、かける順番を変える、かかり具合を再調整する、他のツールを付け加える、などが自由に簡単にできるところがOZONEのもう一つの良いところです。つまりある程度の完成度までAIにやらせておいて、その後に自由に好みに合わせていくらでも調整が出来るのが非常に秀逸なのです。
また、上記のような使い方のほかに、最初に他の楽曲を参照音源としてAIに聞かせ、それと同様のマスタリングを行わせる、という使い方もできます。
このように、AIさん、なかなか優秀なアシスタントなのですが、音圧を上げすぎてかなり部分的に不自然な仕上がりになっていたり、ヌケの良さを重視しすぎて曲によっては方向性が合わなかったり、ということもやはりありそうです。やはり最終的には人(本物のエンジニア)の感性によって、または曲の目指す方向性によって調整を行うことが大事と言えそうです。
とはいえ、様々なマスタリングツールがバンドルされて、かつAIアシスタントを搭載したOzone 、私のようなマスタリング初心者がノウハウを学習するきっかけとしてはとても良い買い物でした。
興味のある方はより詳しい情報もご紹介できますので、お声がけください。
izotope社 Ozone 9 オフィシャルサイトはこちら。バンドルされているツールの数や機能の違いにより3種類のグレード(Elements, Standard, Advanced)が用意されています。
宅録環境パワーアップ編の次回は最新鋭のブラス音源プラグインをご紹介したいと思います。
